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山中湖村だより(2013年)

投稿日:2020-12-25 更新日:

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山中湖村だより(2013年)

 2013.11.28 【プロローグ】

今週も、引っ越しの整理で絵が描けず、おまけに初回の今日載せようとおもって貸別荘のすぐ裏から見える富士山を撮ったのだが、そのデジカメを持って帰るのを忘れてしまった。そのため、写真は来週イーゼルを立てようと思っているポイントからの写真をグーグルから落として仮に載せました。この写真は、来週差し換えます。

齢とともに、引っ越しがだんだん億劫になってきているが、まあ来週イーゼルを立てればそれも吹き飛んでしまうだろう。風が強そうな所なので、風対策は用意するが、弱ければそれにこしたことはない。なにしろ、現場での強風は、直前の視線のキャンバス上の変換点を風の度に失い、動作の流れを中断されるノッキングでイライラしてしまう。しかし、修行!修行!。タンペラマン!タンペラマン!。「求めよさらば与えられん」。

 2013.12.05 【富士(81、82)】

今週は山中湖村で初めてイーゼルを立てた。御殿場での「富士(80)」から現場に立つのは1カ月ぶりなので身体が描く喜びに堪能した。フルスロットルで目と手が眼前の存在に反応すると、身心は、日常生活の残滓が燃え尽きクリーニングされて、新しい作品ごとにレフレッシュされる。

同じ富士山でも、背中から日が昇り全光の御殿場から、画面の左から日が昇り尾根筋と沢筋に陰翳がつく光は新鮮だ。

昨日(4日)はカメラマンのビュースポットで有名なパノラマ台駐車場に、朝早いので誰もいないだろうとおもって行ったのだが、早朝の紅富士目当てのカメラマンがすでに何人もビューポイントに三脚を立てていた。いつも、ひとりぼっちで富士に対峙しているのでチョットやりにくい。少し明神山の登山道を上ると誰もいないいい場所があったので山中湖村での初めてのイーゼルポイントに決める。F12号のキャンバスで「富士(81)」を手始めに手を付けたのだが、山中湖をもう少し画面に入れたいので、来週はP20号で描こうかな。

今日(5日)は借家のすぐ裏の伐採地跡からの「富士(82)」をF6号で描いた。絵を描けば、引っ越してまだ新しい生活もだんだん馴染んでくるだろう。描けば、何処も都だ。

 2013.12.12 【富士(83、84)】

今週の山中湖行は、11日の朝食後、先週イーゼルを立てたパナラマ台駐車場を上って駿河小山に下る、県道730号線の三国峠から、登山道を歩き明神山山頂でイーゼルを立てた(『富士(83)』P12号縦)。三国峠からは茅原のなだらかな登山道で30分位いで1291mの山頂につく。下りはなんでもないが、上りは背中の絵具箱兼三脚がこたえる。山頂は山中諏訪神社の奥宮がまつられ、三角点もある広場で季節がよくなるとハイキングの人達で賑わうことだろうが、この日は誰もいない。三国峠までは曇りがちながら富士の姿は見えていたのだが、山頂はガスがかかり、しばらくデジカメであちこち写真を撮って待っていたのだがいっこうにガスは消えず、腹をくくってキャンバス上の富士の姿を予想して茅原を描いていると、途中で一瞬富士が姿を現わした。ディテールまでは追えなかったが、構図はドンピシャリで、この絵も御殿場一木塚の虹(『富士山麓風景(7)』)と同じく天が私のためだけに用意してくれたようなドラマチック展開で小登山の疲れも吹き飛んだ。

その日の午後2時頃から、借家の裏の伐採地跡で『富士(84)』をF8号横で描く。山中湖は山頂に陽が落ちるダイヤモンド富士が有名だが、季節を問わず落日が富士の近くに重なるので画面に富士山と太陽や早朝の残月が入る機会が多いだろう。湖越しのアングルもあるし、1度には描けない豪勢な悩みで年を越す、まだ少し早いけれど、今年も幸せな1年でした。

 2013.12.19 【アトリエの窓から】

今週の山中湖行は、昨日(18日)裏の伐採地からの紅富士を描こうとおもって6時頃から起きて準備していたのだが曇りで富士も見えず、あきらめて御殿場で描いて持ち越していた矢車草の絵に手を入れて終日過した。昼前から小雪になり、山中湖は気温が低いのでアッというまに外は雪景色。

というわけで、写真は2階のアトリエの窓からの雪の写真を載せました。矢車草の絵は明日完成させてアップします。

 2013.12.27 【富士(85、86)】

今週が今年最後の山中湖行で、昨日(26日)は快晴の富士にめぐまれた。山中湖の富士は南斜面で陽が上ると大抵雲に隠れる御殿場と違って、天気が良いと日中も安定して姿を現わしているので、外で描く時間を、東伊豆当時の、朝食後に戻した。場所はパマノラマ台駐車場。借家の周りの雪が先週帰る時より積もっているので、アリゲーターの長靴を履いていったのだが、先々週描いた「富士(81)」の場所には雪が深くてイーゼルが立てられず、駐車場のはずれの、カメラマンの踏み固めた迹にイーゼルを立てた(『富士(85)』/P20号)。晴れわたり、南アルプスの山々も見渡せる。午前中1点描いてもまだ晴れわたっているので合せて持っていったF20号のキャンバスにも手をつけた(『富士(86)』/F20号)。

パノラマ台という名のごとく、眼前に180度視界が開けているので、ここでは富士山と山中湖の全景を入れた、風景画の大作が描けるかもしれない。モネのオランジェリー美術館の大作の失敗(と私はおもっている)のように、風景画の大作はキャンバスを直接外に持ち出せないないために、小さな視角の作品をもとにアトリエで大きく引き延ばして描くために大抵は失敗する。30号で丁度良い作品をそのまま100号に引き延ばしても視角の違いが物感をそこなうのだ(例;人物画の場合の大作は群像になるので、一人の人物を大作に引き延ばすと巨大な人物になってしまう)。だけど、やはり100号は外には持ちだせないので、さてどうするか。

いくつかのアイデアが浮ぶのだが、来年それを試してみよう。

 

 

 

 

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