岡野岬石の資料蔵

岡野岬石の作品とテキスト等の情報ボックスとしてブログ形式で随時発信します。

作品の記録

山中湖村だより(2015年)

投稿日:2021-03-06 更新日:

 

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山中湖村だより(2015年)

 2015.1.09 【富士(143)、富士(144)、富士(145)、富士(146)】

新年の山中湖行は、7日から今日(9日)まで山中湖村で過ごした。冬型の天気図で、日本海側で雪が降る時は、富士山は大抵晴天で一日中姿を現わす。今回の山中湖滞在中ずっと晴れて、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)がタダでモデルになってくれているのに、これを放っておいて、他のことはできない。

但し、新年早々なので、富士(143)-F3号-7日3時半過ぎ、富士(144)-P8号-8日9時過ぎ、富士(145)-F8号-8日10時半過ぎ、富士(146)-P4号-9日3時判過ぎと、小品ばかりで軽めの肩ならしの出だし。なかでも、8日の日は、平野の山中湖畔の初めてのポイントでP8号とF8号のキャンバスを持って行ったのだが、P8号をオーソドックスに横構図で描いた後、F8号のキャンバスを縦に使って湖畔の富士を描いたのが、東伊豆からのイーゼル絵画で鍛え上げたスキルの蓄積の成果だろう。

今年も(近年毎年のことだが)、絶好調のすべり出しだ。

 2015.1.16 【樹氷】

年明けて2度目の山中湖行は、14日から今日(16日)まで山中湖村で過ごした。15日は朝曇り、昼過ぎから雨後みぞれ、雪にかわり、山中湖村は気温が低いので、あっという間に雪が積もり、夕方から道路に除雪車もでた。というわけで、当日パノラマ台に描きにいく予定でS20号のキャンバスを張って準備していたのだが、今回は、外に描きに出られず、たまっている描きかけの絵に手を入れて滞在中を過した。

今朝は天気が良く、気温も高めなので、昨日の着雪した雪が透明な氷のたま状になって梢に付き、それが朝陽にキラキラ輝いて美しい。急いで、デジカメで撮ったが、朝陽で氷が解けてどんどん落ちてゆくので、これはイーゼル画では描けない。窓からの梢を、一旦イーゼル画で描き、記憶と、写真を参考にしてアトリエ画で描けば何とか画面に定着できるだろう。

将来、この時の絵が出来ようが出来なかろうが、こういう美しさを見逃さず、私の眼が認識、経験することが画家としての修行のおかげなのだから、描きたい絵のイメージがわくだけで、おもわず小さなガッツポーズがでる。

まさに「現成公按」、「修証一等」だね、これは。

 2015.1.23 【富士(124)、富士(138)】

今週の山中湖行は、21日から今日(23日)まで山中湖村で過ごした。今回は天気が悪く、一度も外に出られなかった。外で描けないのは残念だが、その代わりに、去年の10月16日に手を付けた『富士(124)』と、12月18日に手を付けた『富士(138)』をほぼ完成させた。今日柏に持ち帰ったので、近日中に「最新作」に投稿します。

柏に帰ってくると、宅急便で3月の個展のDMが出来あがって届いていた。柏にいると、テレビも新聞も長年取っていないし、ほとんど絵を描くことと、読書と、パソコンの他にはなにもしてはいないのだが、そうはいっても、日常生活の雑多な出来事を処理しなければならない。そして、知らず知らずに日常生活の空間に染汚(ぜんな)される。

東伊豆から御殿場、山中湖とほぼ毎週、純粋に絵の世界にひたれる空間を確保出来る巡り合わせに出会えたことは、なんと有難く幸せなことなのだろう。天の、「見えざる手」に感謝します。

 2015.1.30 【富士(147)】

今週の山中湖行は、28日から今日(30日)まで山中湖村で過ごした。昨日(29日)は、朝から快晴で、このところねらっていたパノラマ台でイーゼルを立てた。ガードレールの外側の狭いポイントなので、除雪した雪でイーゼルが立てられないおそれがあるため、大雪が降る前にぜひとも描きたかった場所だ。去年の12月18日にP15号(最新作にアップした、『富士-138』)で描いた場所で、うまくいったので、S20号のキャンバスで筆を走らせた。

天気も安定し、雲がほとんど湧かず、風もなく、気温もこの時期にしては高めなので、キャンバスを埋めていくのを急がされない。外で描くと、こんな好条件が揃うことはめったにないので、まったく気持の良い描画で、キャンバスがうまっていくのが惜しくなるような時間だった。それでも、大きめの画面なので、1点描き終えると、もう1点に手を付ける余力はない。

描画の条件の良し悪しと、作品の良し悪しは比例するとはかぎらないが、むしろ、今まで、悪条件を克服したときの方が結果良かったりするのだが、楽しく描けて、結果も良ければそれにこしたことはない。

その日は、午後から曇り、夜雪になって、今日は山中湖村では大雪、これで、この場所は当分描けないだろう。イーゼル絵画は、而今(にこん)の現成公按をキャんバス上に変換、定着する行為であるなあと、つくづく感じる。

  

2015.2.06  【雪の中】

今週の山中湖行は、4日から今日(6日)まで山中湖村で過ごした。昨日(5日)は、予定では平野の湖畔でF10号の縦構図で描く予定で準備していたのだが、朝からの雪が一日中降り続き、終日アトリエで溜まっている絵を描き進める。昨年の、11月27日に調節池で描いた、『富士(131)』(P8)と『富士(132)』(F8)で、ほとんど完成したので、明日こちら(柏)で撮影して、最新作にアップできるだろう。

写真は、今日の朝の光の中のアトリエの作品、もちろん、こちらのアトリエは北窓ではないので、描くときは遮光のカーテンをして描きます。フェイスブックには窓からの富士山と、窓の外の雪景色の写真もアップします。

 2015.2.13 【富士(148)、富士(149)】

今週の山中湖行は、11日から今日(13日)まで山中湖村で過ごした。昨日(12日)は一日中ほとんど休息なしに外で過ごした。まず、6時起床、コーヒーと昨日来る時に寄った、山中湖のバス停とアトリエの中間にある喫茶店『ソレイユ』のシュークリームでタバコを一服、ジュリアンボックスを担いで「一の橋」のバス停まで行く。途中の凍結した道路を歩くのが恐いので、軽登山靴に滑り止めの鋲付きのアッタチメントを付け、靴下には携帯カイロを貼付けて7時26分発の道志小学校行きのバスに乗る。いつもは、同じ富士急山梨バスの山中湖周遊バスのふじっこ号で平野に行くのだが、今回は初めてこの路線バスに乗車、平野で降りず、終点まで行って、同じコースの折り返しの同じバスで平野で降り、「富士(148)」をP10号で描いた。

柏に帰ってきてネットで調べたのだが、この道路は国道413号で神奈川県の津久井湖に注ぐ道志川沿いの、『道志みち』とよばれ、冬は雪や凍結で、おまけに2車線の狭い山間のコースなので、一部のマニヤには有名な道らしい。その道を裏から行った訳で、山伏峠のトンネルを超えると、山中湖側の明るい湖畔の別荘地の風景から、つげ義春の『貧困旅行記』的雰囲気に一変する。両側を山に挟まれほとんど平らな土地がないのだ。(8時半頃、終点に着いて、同じバスの富士山駅行きの発車まで20分位時間があり、写真と動画を撮ったので、フェイスブックに投稿します)

同じ道を引返して平野で降り、湖面の全面結氷はしなくなって久しいが、平野側の湖面は浅いからなのか結氷していて、前景が白い雪上の富士を描く。昼前に描き終え、12時42分に平野発のふじっこ2号の待ち時間まで、『まるたか』(中華料理が中心で料理が美味しく、意外にもコーキーがうまく、タバコも吸える)で定食と生ビールとコーヒーで食事をすます。

午後1時半頃にアトリエに帰り、午前中に描いた絵に手を入れ、2時半頃調節池に向う。この時の雪中の上り道がつらかったが、現場でイーゼルを立てさえすれば、すべて忘れる。4時頃ちょうど富士山頂の真上に太陽がくるだろうと、前日、時間をみていたので3時頃から描き始める算段だ。

ダイヤモンド富士は山と林が黒くつぶれてしまうので、私には画興が湧かない。太陽が山頂に隠れない、山頂の真上にある富士、「天頂富士」を見てみたい、描いてみたいという私の画描き魂と、天の見えざる手がこの場(トポス)に引き会わせ、キャンバスの上に現成する。3時頃から下部の林から描き始め、4時頃のクライマックスに最後の描写を遇わせたのだが、林の部分の描写は1時間前の調子なので、実際の関係とは違っていた。今後描き進める時に修正していこう。こんなことも、やはり、事件は現場でしか起こらないんだなあ。

アトリエに帰って、1時間くらい修正と、後片付けで6時前にやっと画家の1日が終る。

長年使っている、ジュリアンボックスも、履き慣れた軽登山靴も、山中湖村の貸別荘も、これだけ使いきれば、本望だろう。この私の身体も、時間も、天がこの世に私という存在を現成せしめたレーゾンデートル(存在理由、存在価値)をこの日のように使いきれば、一日の終りは、「廓然無聖(かくねんむしょう)」で清々しい。

 2015.2.20 【富士(150)】

今週の山中湖行は、18日から今日(20日)まで山中湖村で過ごした。着いた日は小雪が降っていたが、翌日(19日)は晴れだというので、F20号とS20号のキャンバスを用意して14時33分一の橋バス停発のふじっこ号で平野に行き3時過ぎに山中湖湖畔にイーゼルを立てた。先週の調節池に続いて、今週は4時過ぎの富士山頂の日没、湖畔からの「天頂富士」がねらいだった。この日は冬型の気圧がゆるんが暖かい一日で、こういう日は天気が良くても早朝を過ぎると山頂が雲に隠れることが多い。

現場に着くとやはり雲が多い、一瞬このまま写真だけ撮って帰ろうかとも考えたが、雲間からの太陽光線が、近景の結氷した湖面には反射しないが、遠景の波に乱反射した結氷していない湖面の光が美しい。今日のもう一つの目的がこの結氷した湖面と結氷していない湖面の、太陽が正面やや上方の時の反射の確認で、その写真を撮ってから、あらためてこの光を描こうと腹を据える。

御殿場の一木塚で富士山頂も雲に隠れ小雨も降り出して途中であきらめかけたが、突然、画面のなかの計ったような位置に虹が現われ、イーゼル画で虹を描く僥倖に恵まれたことがある。イーゼル画はアトリエ画と違って、一期一会の而今(にこん)の現成(げんじょう)で、その時にイーゼルを立てれば、条件が多少悪くても、それを描くしかないし、むしろ描くべきである。

キャンバスの表面が、美しい光と、秩序ある空間に現成結実すれば、すべてが正解に変わる。結果良ければ全て良し。その絵がつまらないものになるのは、自分の力の無さのせいなので努力するしかない。だから、条件に恵まれた幸せな絵は勿論それに越したことはないが、条件がそろっていなくても、それはそれでいっそうのファイトが湧く。それがイーゼル絵画というものだ。

 2015.2.27 【富士山麓風景(24)】

今週の山中湖行は、25日から今日(27日)まで山中湖村で過ごした。メインの26日はパノラマ台で描くつもりでS25号を用意していたのだが朝起きたら霧、それならばと、裏の伐採地に出かけて、F6号のキャンバスでイーゼルを立てた。後半霧雨になって、パレットとキャンバスの表面の水滴がハジいて描きにくかったが、1枚でも外で描ければ気がすむ。

いつもなら、個展の準備はとっくに終っているのだが、今回はダン箱作りと、キャプションのラベル作りが残っている。月曜日に搬入、飾り付けなので明日、明後日と2日間しかない。そして2週間山中湖には行けない。そのため、たとえ小品1点でも描けてよかった。

 2015.3.18 【富士(151)】

今週の山中湖行は、16日から今日(18日)まで山中湖村で過ごした。いつもの曜日とは変則で、月曜日から水曜日までだが、その訳は、2週間個展のために外で描けなかったので、たまらず出かけた。

人間は身体が一つなので、自分の生きている世界が間違いなく世界と思っているし、またそう思わなくては生きてはいけない。2週間銀座の画廊に通っていると、その空間の世界に、日常生活のリアリティーが次第に染まっていくのが分る。

私が今まで住んだ場所も、世界中のあらゆる場所も、間違いなく同じ時間を過ごしているのだから、当然富士は、そして山中湖村のアトリエはその場所での日常の時間が過ぎている。世界全体の存在は、一つの空間と、時間が過ぎているのだが、分厚い電話帳のように、人は色々のページで生きている。

しかし、たった一人外光の中で絵を描いていると、そのような相対的な世界が消え、世界存在にダイレクトに相対し、また相互挿入して一体化する瞬間を味わえる。これが、たまらないんだなぁ。だから私は、少し絵から離れると、薬の切れたジャンキーのように、イーゼル画を描きたがるのだ。

 2015.3.27 【山伏旧トンネル】

今週の山中湖行は、25日から今日(27日)まで山中湖村で過ごした。26日は、「一ノ橋」のバス停から日に朝夕2本しかない7時26分の道志小学校行きのバスで途中の「山伏峠」で降り、近くの旧廃トンネルの前でイーゼルを立てた。トンネル、橋、道はなぜか心惹かれる。似たようなモチーフは、以前沖縄の中城(なかぐすく)城趾で数点描いたことがあるが、イーゼル画では初めてだ。どんな絵になるのか見当もつかない。

イーゼル画を5年もやると、数々の場数を踏んでいるので、こういう時の対処法は自然に身体(からだ)が反応する。こういう時は、自分が対象を捩じ伏せようとか、造形的に捉え直そうとか、自分の心理を表現しようとかしないで、つまり、自分の自我意識を消し去って、オートマチックに視線と手が交換する、行き先は目と手に聞いてくれという態度でやるしかないし、また現実に他のモチーフのイーゼル画でも最近はそうしている。一応、画面は埋めたが、まだどんな絵になるのか分らない。絵を進めるのが楽しみでもあるし、進行が堂々巡りをすれば、その時は絵を放っとけばいいのだ。

帰りは、終点道志小学校から富士山駅行きの同じバスの折り返しに間に合ったので(9時26分「山伏峠」)それで帰ってきた。来週は、平野で富士を描こうとおもう。

 2015.4.03 【富士(152)】

今週の山中湖行は、1日から今日(3日)まで山中湖村で過ごした。2日は「一ノ橋」のバス停から7時26分の道志小学校行きのバスで平野で降り、湖畔からの富士を描く予定だったのだが、朝霧で富士が見えず行くのを中止。朝食後、天気予報通りに晴れて富士が見えたので、10時頃から正午まで、予定を変更してパノラマ台の、松を近景に入れた私のお気に入りのいつもの場所でイーゼルを立てた。松のグリーンがまだ枯れ色のオークルのなかで色とフォルムの変化をつけ、まだタップリとある冠雪のホワイトと空のブルーの色調の組合わせが美しい。おまけに、低い雲(その中は霧、山ではガス)が籠坂峠から山麓を這い流れ、これも昼近くのこの時間では珍しい。富士山には、雲が一部分掛った方が高さが表象されるので、これもおあつらえむきだ。

以上のような風景を、自然は「おまかせ」でジャブジャブあふれさせてくれているのだよ。アリガタイ、アリガタイ。

自然の光景の前でイーゼルを立てれば、画家が、創造だの造形だのという不遜な気持が吹き飛んでしまう。ただ、歎き、ひたすら努力するのは、目の前の現成している完璧な美しい世界をキャンバスの上に変換できない自分の描写力の不足だけでなのだ。描写力をつけて、より美しい絵を描くには、負荷をかけた練習、努力、勉強、修行しか方法はない。でも、これがまた楽しくてたまらないんだよ。「信ずる者は救われる」。

子供の時に聞いた、玉野の町を、太鼓を叩いて伝道、布教していたキリスト教の牧師の歌を思い出した。「♪たーだ信ぜよーお、たーだ信ぜよーお、信ずるもーのはだーれーも、みーなすーくわれん♪」

 2015.4.10 【待春】

今週の山中湖行は、8日から今日(10日)まで山中湖村で過ごした。8日は御殿場までは雨だったが山中湖は雪。昨日、今日は曇りで結局今回は外では描けなかったので、滞っている作品に手を加えた。

それでも今朝は、向いの家の樹の後に、春の朧空のなかの朝陽が上っていたので、急いでP6号のキャンバスで描いた。今回はイーゼル画といっても室内なので、おまけに色彩がない対象なので、いつもと違って木炭で下描きをした(フィキサチーフでは着(と)めない)。たとえ小品でも、1点でもイーゼル画が描けると、気が落ち着く。私にとっては、今やイーゼル画は、禅僧の坐禅のような存在になりつつある。

 2015.4.15 【富士(153)】

今週の山中湖行は、14日から今日(16日)まで山中湖村で過ごした。14日は山中湖では曇りのち雨、メインの15日は朝、6時の天気予報では昼頃から雷雨や突風の大荒れになるようだが、朝は快晴だったので急ぎ調節池に出かけた。セットする頃には天気の悪化する兆しの雲の笠雲が出だし、上空は風が強いのか「乱れ笠雲」(正式の名前は後で検索します)が富士山頂にかかっている。前日のかなりの雨は山頂では雪だったらしく、黒く融けた峯筋が白く覆われて、春なのに珍しく澄んだ青空との組合わせが美しい。パレットに予(あらかじ)めだしていった絵具の空の色が、実際よりも緑がかってしまったので、これから完成までにヴァジターブルーで直す必要がある。イーゼル画はあくまで、対象と裸眼に殉じる姿勢をとらなければ、一筆ごとに正否の迷いと逡巡の袋小路に落ち込んで画面が堂々巡りで進んでいかない。こんなこともイーゼル画で気付いたことだ。

描き終える頃には、アヤシ気な風が吹きだし、富士も雲に隠れ昼過ぎからは予報通り大荒れの天気になった。

今日の、帰りの一の橋のバス停の御殿場行きの時間が変わっていた。少し早くなって、おかげで1時間待っていた御殿場線の国府津行きの電車の、1本前に間に合って、帰柏のルーティンが変わった。いつも御殿場では、駅蕎麦(ここの駅蕎麦は天麩羅を注文してから揚げるので美味しい)で朝食を食べ、駅前の喫煙所でタバコを吸い、駅のコンビニで入れたてカップコーヒーを駅内のベンチで飲んで時間を過すのだが、これが出来ず、朝食とタバコをどうするかという問題が新たに持ち上がった。色んな選択肢を考えたのだが、御殿場線と小田急線の乗り換えで降りる、冬の間建て替えで閉まっていた小田急の新松田駅横にある「箱根蕎麦」の建物が新装開店していて、おまけにカンビールもあったので、コロッケでカンビールを飲み、掻き揚げ蕎麦(朝蕎麦と迷ったが)を食べて、今度からはこれで決まりだ。

いつもは、私一人で乗る一の橋のバス停も今朝は、御殿場に通う新入生らしい女子高生も乗ってきて、すべてが去年の春と違っている。今年の花や虫は、去年の花や虫と同じようにみえても個体が違うのだ。世界は道元の言う通り、今、今、今、今と「現成公按」している。

山ボウシ いつもの花も 今年(こぞ)の花 (岬石、2005年5月23日)

 2015.4.23 【富士(154)、富士(155)】

今週の山中湖行は、21日から今日(23日)まで山中湖村で過ごした。22日、23日(今日)共に天気がよく、両日とも朝、平野の『山中湖交流プラザきらら』の周りでイーゼルを立てた。ここは、何度かイーゼルを立てた平野浜のすぐ横にあって、園内は広くてよく整備され水場もトイレもベンチも揃っているので、お花見には最適だろう。

今回、ここに来たのは、今年の山中湖村のカレンダーの写真に載っていた、ズミの木と富士山のポイントの確認(白い花盛りのズミの木と富士山を描いてみたい)と、山中湖ではちょうど満開ま近い桜の入った富士山の、ロケハンを兼ねての行動だ。22日の「富士(154)」は園の外の花盛りの白いコブシの花の枝の入った富士山、23日の「富士(155)」は園内の木道の横の桜と富士山 、どちらもやや強引に画にしたきらいはあるが、なんとか完成までもってゆきたい。

「富士(154)」の白いコブシの花を、ピンク色の桜に変えたい誘惑にかられるが、それをやったのではイーゼル画の因って立つ根底が崩れるのでジっと我慢しました。だって、昔の人も言ったじゃないですか、「嘘つきは泥棒のはじまり」と、「天知る、地知る、己(おのれ)知る」と。

 2015.4.30 【富士(156)、富士(157)】

今週の山中湖行は、28日から今日(30日)まで山中湖村で過ごした。28日は春の薄曇りの天気ながら富士が見えていたので、午後3時頃から平野浜のいつもの場所でイーゼルを立てた。午後の光る湖と富士を予想していたのだが、春霞みが遠景の空一面にかかり、夢幻的な光の中に山が包まれている。P8号のキャンバスで、風景画にしては比較的狭い画角で描いていたので最初は気付かなかったが、途中で太陽に日暈がかかっているので、急いでデジカメで撮っておいた。

前回(2014年5月15日)やはり同じ場所で、同じような高曇りの空に日暈がかかっていたのを見たので(富士【103】)、ここのポイントは条件の組合わせが揃っているということが分る。まず、全天を見渡せる場所であること、太陽や月を視界に入れることは普段めったにないこと、部分的なアークでは気付かないこと、天候などと全てが揃うこと。そして肝心なのは、そのことを認識する人がその場の対面(トイメン、麻雀用語)に立ち遇わなければ、折角の天の配慮も何事もなく過ぎてしまうことだろう。

今回の日暈の円周は前回見たときよりも大きく(たぶん、見る人と、その時出ていた雲の距離の違いだろう)、虹色も前回よりは認識(内側がピンクで外側がブルー)でき、今回は描かなかったが、アトリエ画で描く機会があるだろう。

「富士(157)」は、先週の「富士(154)」の山頂から右側の山裾をもう少し入れた構図を描きたかったので、コブシの花がまだ咲いている間(あいだ)にと、29日の朝P15号のキャンバスでイーゼルを立てた。

 2015.5.07 【富士(158)】

今週の山中湖行は、5日から今日(7日)まで山中湖村で過ごした。6日は朝から快晴、湖畔の平野は連休中なので人出が多く落ち着かないのを予想して、いつもの調節池でイーゼルを立てた。目の前の有料道路の交通量はさすがに多く、また、バイクツーリングの集団が何組も通り過ぎる音が聞こえる。いずれにせよ、身の周りが明るく活動的なのは喜ばしい。

 

雲ひとつない富士を描き始める。新緑の林の上にそびえる富士山は美しいが、冠雪が融け、稜線が黒く出ているのが悩ましい(つまり白い部分を周りから描き残す作業をするので、コツがいる)が、歴戦の勇士はすでに多くの戦歴を積んでいる。

こういう場合は、ジレて描画を端折らないこと。丹念に淡々と、1つの視線を1つのタッチで画面に置いていけば、いつのまにか、キャンバス上は埋まってしまう。ヴァルールやデッサンの間違いや狂いは、後でアトリエで微調整して、完成までもっていけばいいのだ。

 2015.5.14 【富士(159)、富士(160)、富士(161)】

今週の山中湖行は、12日から今日(14日)まで山中湖村で過ごした。メインの13日は、台風一過の快晴、おまけに前夜の激しい雨は植物にとっては干天の慈雨で、新緑が洗われ、まさに風薫る五月だ。

朝、山中湖交流プラザ「きらら」内にあるズミの木の花の様子の下見がてら、先々週の帰りに見付けていた湖畔のポイントで、M10号のキャンバスでイーゼルを立てた。

描き終えて、アトリエに帰る途中、喫茶店『ソレイユ』に立ち寄ると、前の木を、富士山が見えるように切って貰ったとのこと。調節池で描く予定を変更して、午后から店のベランダで描かせてもらった。画角が狭いビューなので、小品でしか絵にならない。しかし、かえって小品の風景画にはピッタリかもしれない。2点目は少しズームアップしてF5号のキャンバス2点に手を付けた。

この日描いた全点、空のブルーと、新緑のグリーンが印象的だった。

(最後の写真は、一度、下車して描きたくて、結局描く機会がなかった御殿場線谷峨駅からの、東名高速道路の天空に架かる橋)

 2015.5.21 【富士(162)、満開のズミの木、富士(163)】

今週の山中湖行は、19日から今日(21日)まで山中湖村で過ごした。メインの20日は、晴れて富士が顔を出せば山中湖交流プラザ「きらら」に行く予定だったが、早朝曇りがちだったので霧を期待して調節池に行き、P10号で1点描いた。朝の斜光が射したり陰ったりしたが、できるだけ緑陰のトーンを追った。富士山頂は描き終える直前に顔を現わしたので(富士の顔を見せるまで、できるだけ空を描くのを遅らせた)、ありがたく、急いで描きました。朝食を食べ、晴れているので富士が見えなくともズミの花の様子を確認しなければと、小品のキャンバスを持って、ふじっ湖1号で「きらら」に、ズミの白い花は枝一面の満開だった。そこで、湖畔のズミの花をF6号のキャンバスで描く。

このぶんだと、来週は花が散っているだろうから、今日が、今年のラストチャンスだろうと、20号のキャンバスを用意して準備だけは万全で朝を待ったのだが、前夜は激しい雷雨。しかし、今日の早朝雨戸の隙間からの日射しで天気を確認、勇躍、朝一番のバスで現場に立った。前夜の風雨で白い花びらがかなり地面に落ちている。

こんな時は描くのが嬉しくて、楽しいよ。一年のなかのワンチャンスに立ち遇えるのだから。

 2015.5.28 【富士(164)】

今週の山中湖行は、26日から今日(28日)まで山中湖村で過ごした。メインの27日は、東京では真夏日だったそうだが、山中湖はまさに避暑地の清々(すがすが)しい一日だった。

昨日(27日)早朝、調節池に行く。この日は、いつも描く場所の近くの、富士山に向って左寄りのダムの端にイーゼルを立てた。ここの周辺は、下の道路から見え、以前注意されたことがあるので座って描いたが、やはり立って描くほうが描きやすいし、また同じ位置でも目の高さによって対象は違って見える。描き終えて、立って描ける場所を探す。夏は草木の葉が繁るので目立たないセッティングで描けば大丈夫だろうという場所があったので、近々そこで、描こうとおもう。

今回は、富士山の裾野をできるだけ入れようとおもって、P20号で描いたのだが、まだ入りきらないので、帰ってから、M25号のキャンバスを張った。富士山に近い位置で裾野までを入れるには、これでもまだ画面の縦横比が小さいかもしれない。特注で木枠を作ってもらうのも一案だが、あまりに横長の画面にすると、パノラマ写真のように、現実感が薄れるので、キャンバスのMサイズが限界だろう。こんな命題が立つのもイーゼル絵画ならでの「事件は現場で起こる」で嬉しいし、次の作品のモチベーションになる。

平野の湖畔からの夏の富士も描かなくてはとおもっているし、富士が画面に入らない山麓の風景や、山中湖の湖畔の風景も何カ所か見付けているので、別荘でノンビリ過すというとは程遠い毎日で、画狂老人はウレチイナァ~!

 2015.6.04 【富士(166)】

今週の山中湖行は、3日から今日(5日)まで山中湖村で過ごした。メインの4日は、梅雨入り間近の間の晴れた一日で、平野の湖畔で「富士(166、M15号)」に手を付けた。

山頂の融け残った谷筋の雪も、この時期になると少なくなっていくが、ホワイトをキャンバスの地を描き残していく作業は面倒くさい。しかし、ジレないで淡々と視線とタッチを合せていけばいつの間にかキャンバスは埋まっていく。結局は、急がば回れ、千里の道も一歩から、である。

アトリエ画と違って、イーゼル画の描写は、対象を時間も空間もオールオーバーに全元論で捉えなければ、一筆も進まない。画家の対象に向ける視線は、一視線ごとに、絞りもレンズも画面設定も瞬時に変えて見ているので、大きさも、位置も、色も、明度も、視線ごとに、ピコピコと動き変わる。そして、見ている対象のポイントは必ず視角の真ん中で見る。つまり、写真のように一つの視線と一瞬の時間で、時間と空間を微分化して定着させる捉え方と、画家が裸眼で対象を前にした捉え方、一瞬一瞬の視線をタッチで埋めていく、時間と空間を積分化していく捉え方はまったく違うのだ。当然、私の「裸眼のリアリズム」と「抽象印象主義」の作品と、写真や光学的図学的、あるいはコンピューターグラフィックスの作品は、画面の表面の光と空間と、もう一つは積分された時間性が、そもそも違うのだ。

2010年からイーゼル画を始め、その途中で道元に出逢って、仏教の全元論的世界観を自分の芸術のコンセプトのバックボーンに据えて、確信を持って絵が描ける、画家としての幸せな巡り合わせに、感謝感謝のこの頃です。

 2015.6.12 【梅雨空で】

今週の山中湖行は、10日から今日(12日)まで山中湖村で過ごした。3日間とも梅雨空で外に描きに出かけられなかったが、その分、溜まっている作品を描いて、ほぼ完成して持ち帰ったので近々最新作でアップします。というわけで、写真が1枚もないので、掲載した写真は、先々週(5月28日)に撮ったものをアップしました。今度、描こうと思っているアングルの、調節池からの富士山です。

 2015.6.19 【やはり梅雨】

今週の山中湖行は、17日から今日(19日)まで山中湖村で過ごした。着いた日の、夕方から今日出るまでずっと雨。

着いた日の午后は、建物の廻りと、道路際の草刈りをした。刈り込み鋏で作業したので能率が悪く、次は草刈り鎌(三日月型の刃)を買っておかなければとおもう。刈り込み鋏だと、1本の草を何度も刈ることになるが、鎌で根本を切ると1回の作業で草が刈れる。コツは鎌を途中で何度も研ぐこと、これはかって、千葉の茅葺きの農家を借りて住んでいたときに、大家さんの草刈りの様子をみて知っている。よく切れる鎌で、地面近くを撫でるようにはらえばみるみるうちに草が刈れる。見るとヤルのは大違いだが、世の中で一番難しい「芸術」に取り組んで生きているので、アアなればコウなるという、思考が直線的な命題をクリアーするのは簡単だ。

草刈りの時に、ミヤマオダマキとナルコユリが咲いていたので別にとっておいて翌日(18日)F3号とF5号の作品に手を付けた。どちらも下向きの花だし、山野草は、園芸種の花と違って草むらの中にあるとあまり目立たないが、切花にすると存在感がきわだつ。

天は隅から隅まで微細な部分まで平等に「現成」し、手を抜くなんてケチな真似はしない。

 2015.6.26 【富士(167)】

今週の山中湖行は、24日から今日(26日)まで山中湖村で過ごした。メインの25日は、梅雨の間の晴れた一日で、久しぶりのパノラマ台で「富士(167、S25号)」に手を付けた。昨年の夏は、先日近作横型でアップした『富士(117、M30号)』と『山中湖(M30号)」と同じ場所でイーゼルを立てたが、今年の1月『富士(147、S20号)』と4月『富士(152、S20号)』で、近景の枯れ色の中の緑の松で、Sサイズの構図がうまくいったので、草木が緑に変わってから、ずっとねらっていたのだが、やっと念願かなった。

しかしこれからの富士山は、御殿場と同じで、晴れた日は10時頃には雲に隠れてしまう。夏は日の出が早いので、6時には現場に立ちたいのだが、山中湖のタクシーは7時からしか迎車できない。だからこの時期の描画は、変則だが、まず、富士山から描き始める。描き終える頃には、写真のように山頂は雲の中だ。ブラッと行って、「棚からぼた餅」のように、偶然いいモチーフに出会い、いい絵が描け、いい絵が完成する、ということは金輪際無い。

 2015.7.03 【梅雨で】

今週の山中湖行は、1日から今日(3日)まで山中湖村で過ごした。昨日(2日)は、朝曇り空で、天気予報も曇りだったので、以前から目を付けていた湖畔のポイントに初めてイーゼルを立てた。描きはじめた頃から細かい雨が降りだし、イーゼルを立てた場所が前下がりでキャンバスの面が寝るために雨で濡れ、描きにくいので早めに諦めてアトリエに帰った。色を着ければ、その日の天候や太陽の位置の違いで、ヴァルールが変わるので、途中の絵を別の日に描き加えるのは難しいが、今回は立ち木の線だけなので、別の日に出直して、キャンバスを埋めようとおもう。翌日(今日、3日)雨が降らなければ、午前中現地で描くつもりだったが、山中湖は今日も大雨で、結局、アトリエに閉じ込められて外には出かけられなかった。

写真は、描く前に撮った現場の写真。フェイスブックには途中で終った、F10号のキャンバスの写真も投稿します。

 2015.7.16 【緑陰、富士(168)】

今週の山中湖行は、14日から今日(16日)まで山中湖村で過ごした。着いた日の午后は、2階のアトリエの窓からの木々の緑陰が美しいのでF8号のキャンバスで描く。以前なら、こんな細かい光の対象は、面倒さと難しさとで描く気持が臆していたが、5年間のイーゼル画の修行のおかげで、いまやどんな対象、状況でも現場でイーゼルを立てさえすれば、必ず作品化できる自信ができた。

翌日は朝6時頃から調節池で富士(168)をM15号のキャンバスで手を着ける。朝の長い波長で植物の生えていない山頂が赤褐色だが、夜明け前の山頂に当たった光はもっと赤くなるだろう。この夏には、そんな富士も描くチャンスがあるだろから楽しみである。

早朝は雲一つ無くても、描き終えるころには、たいてい山頂は雲に隠れる。だから、山頂から画面を埋めていくのだが、これは止むを得ずそうするので、部分から全体へと描写を広げると、大きなマッスのヴァルールが狂ってしまう。これは、現場から絵を持ち帰って、今後のアトリエでの作業でクリアできるだろう。

今朝の山中湖から、柏への道中は、台風の大雨のせいで、鉄道の各線が不通、結局、御殿場から沼津に廻り、三島から新幹線で東京まで帰った。途中での分岐点の選択と決断は、瞬時に頭に浮かび、まだ脳は衰えていないと自信がついた。今はパソコンで情報が得られ、宿の予約も簡単で旅行も楽だが、20代から行き当たりバッタリで全国を取材旅行してきた経験は、いまだに生きている。

“長年、数々の修羅場をくぐり抜けてきて身につけた刀傷は、ダテではないのだヨ、フッ、フッ、フッ…”

 2015.7.23 【富士(169)】

今週の山中湖行は、21日から今日(23日)まで山中湖村で過ごした。22日は前日からの天気の続きで、夜明け前の赤富士をねらって、調節池の現場に午前4時20分ころイーゼルを立てた(日の出の時間は午前4時41分)。しかし、もしかの用意にキャップライトを入れたりして、いつもとルーティンが違うせいなのかどうか、ジュリアンボックスのなかに溶き油と油壺を忘れてきてしまった。箱のなかで動かないように布で包んで行くのだが、布だけあって中味が無い。すぐに、取りに帰ることを決断する。往復で30分かかり、日の出前の赤富士は諦めるが、今回の絵は今回の絵で、それはそれで良い絵になればいいので起きた事は仕様がない。日の出前の赤富士は、次の機会の宿題にしよう。

30分後、陽の光は画面下部の林の木々にまで射しているが、早朝の波長の長い光は赤味がかかって、まだ充分に赤富士である。冬の冠雪の形は、植物の生えていない、岩や、砂礫の部分だと分かり、だから、赤い部分は、冬の雪の白い部分と重なる。

忘れ物を取りに帰る途中で撮った写真(ユーチューブの方には載せます)だと、山全体が赤紫色で、空の色もまだ白っぽい。富士山がそうで、前の林に日射しがなくて明暗の対比が大きい瞬間が次の絵の狙い目であろう。

今朝、晴れて富士が見えれば帰柏を1日延ばして描きにいこうと、前日キャンバスを張って準備していたのだが、前夜の雨で朝から曇り空なのでいつものように朝山中湖を発った。

 2015.7.31 【湖畔の風景(2)】

今週の山中湖行は、29日から今日(31日)まで山中湖村で過ごした。30日は先週からの続きで夜明け前の赤富士をねらっていたのだが条件が悪く、それならばと、朝食後、山中湖畔の初めてのポイントにP8号のキャンバスでイーゼルを立てた。

このてのモチーフは昔からお手の物なので、すんなりと画面が埋まる。この絵は、いつものように、青紫色のハッチングとチタニウムホワイトをうすく全面にかける2工程を省いて、今後直接完成に向かおうとおもう。

山中湖は夏休みに入って、お盆までは観光客や運動部の合宿などで賑わいをみせる。描いている背面の湖畔の国道の車の通過音で条件がイマイチだが、日頃の修行のおかげでひとたび筆を持てば、「身心(しんじん)脱落、脱落身心」で筆が進む。修行は結果を裏切らない。

 2015.8.06 【富士(170)】

今週の山中湖行は、4日から今日(6日)まで山中湖村で過ごした。5日は前日からの天気の続きで、夜明け前の赤富士をねらって、午前4時起床、調節池の現場に午前4時40分ころイーゼルを立てた(日の出の時間は午前4時56分)。この日はドンピシャリ、刻々と変化する光のシンフォニーの現場に立ち合えた。フェイスブックには何枚も写真をアップできるので載せるけれども、空の色の変化と陽が昇るにつれて手前の林にも陽が射し下りてくるので、描写を滅茶苦茶に急がされる。いつもより30分から1時間早く描き終わり、5時47分に絵の写真を撮って、イーゼルをたたんだ。

朝食後、まだ富士は姿が出ていて条件がいいし、時間もタップリあるので、また、違う場所に描きに行ってもいいのだが、この日はこの1点で気力が尽きた。

 2015.8.14 【草むら】

今週の山中湖行は、11日から今日(14日)まで山中湖村で過ごした。今回は、まるまる中2日あったののだが、両日とも天気が悪く、外に描きに出られなかった。こういう日は、いつも通りに溜まっている絵を描き進める。2点を、ほぼ完成させたので、近日中に最新作でアップできるだろう。

という訳で、現場での写真がないので、昨日、夕食後タバコを一服中、雨上がりの夕日に光る庭の草むらが美しかったので、その時の写真を載せます。草むらの絵は、伊豆にいる時から描いてみたいとおもっているのだが、モチーフと光(太陽の方向と角度)がピンポイントなのでなかなか実現しない。さて、どうなりますか。

 2015.8.20 【跨線橋】

今週の山中湖行は、18日から今日(20日)まで山中湖村で過ごした。19日は平野浜で富士を描こうと思っていたのだが、朝から曇り空で諦め、18日の午后、19日の午前中までアトリエで途中の作品に手を入れた。富士が、隠れた場合のモチーフを見付けておかなければと、午后から自転車で近くを、探索したのだが、これは空振りで1枚も写真が撮れなかった。

そうであるならば、来週は、朝、富士が見えれば平野浜に、富士がでなければ、バスで御殿場の〈上小林〉附近の棚田の風景を描きに行くつもりだ。ここは、御殿場に居た時には気付かず、山中湖の行き帰りの車中で初めて知った場所だ。籠坂峠から御殿場よりの場所に、もう数カ所描いてみたいポイントはあるのだが、バスの座席の高い視点で見付けたビューと、バスから降りての、低い視点から都合の良いイーゼルを立てるスペースがあるかどうかが疑問なのでまだロケハンはしていない。それにしても、イーゼル画をやり始めた5年前は、元気だったなぁ。

という訳で、今回は他にまったく写真がないので、18日に松田から御殿場まで行く、御殿場線の山北駅付近の跨線橋を、電車の運転席横の窓越しに写した写真を載せました。

丹那トンネルが出来て東海道線が熱海を通るまでは、御殿場線が東海道本線で、もちろん複線でトンネルや橋梁も2つづつ作り、そこをSLが走っていたんだよ。現在廃トンネルになっているもう1つのトンネルや、鉄橋が架かっていた跡や、もう1本の線路スペースなど(山北駅から御殿場駅まで現在の線路の右や左に振り変わる)、車窓からの風景は見飽きない。この線の周辺にも何カ所か描いてみたい場所があるが、さてどうなりますか。

まあ、富士が200点を超えるまでは、富士中心に描いていこう。

 2015.8.27 【窓外風景】

今週の山中湖行は、25日から今日(27日)まで山中湖村で過ごした。ここ2週間天候に恵まれず、今回も、外に描きに出られなかった。

26日は朝からの雨で、以前(7月16日)晴れた時に描いた、2階のアトリエの窓からの木立が、白い空をバックに雨に濡れたオキサイト・グリーンの階調が美しいので、F8号のキャンバスで手をつけた。雨の時は外では描けないので、雨で丁度良かった。このところ、欲求不満だったので、1点でも描ければ気が済む。

野外で描くのと違って、室内で描くのは、やはり落ち着いてキャンバスを埋められる。これまでの作品は、現場からアトリエに持ち帰ってから、作品の空間の、いわば整地作業といってよい2行程の作業をやってから、完成に向かっていたのだが、その行程を抜いて、今後の作品は、しばらく、直接完成に向かってみようとおもう。ダイレクトに完成にむかうのと整地作業を行なってから完成にむかうのか、どちらがいいのか、まだ結論はでないのだが、新たな命題が立つことは、これはこれで、26日の体験の成果だ。

事件はいつも現場で起こる。

 2015.9.04 【富士(171)、晩夏のゴールポスト】

今週の山中湖行は、2日から今日(4日)まで山中湖村で過ごした。天候は不安定だったが、短い描画チャンスを逃さず、2日の午后から調節池で『富士(171)』をP10号で、3日の午前中に、描くのが初めてのポイントで『晩夏のゴールポスト』をP10号で手をつけた。

調節池ではもう何点も富士の絵を描いたが、(2日の)午后1時半頃の夏富士は描いたことがない。そもそも、この時期の午后は、大抵山頂は雲に隠れて顔を見せない。この日も、出ない場合は、他の場所で描くつもりの、2面作戦で出かけたのだが、幸運にも描きはじめて終える頃まで、山頂が顔を出してくれた。逆光に近い、青いシルエットの夏富士は美しく、山の手前の雲も画面の中ではお誂え向きだ。今年中にチャンスがあれば、もう少し大きなキャンバスで描いてみたいが、さてどうなりますか。

翌日、3日の午前中は、近くの(近くといっても、絵の道具を担いで行くには骨が折れるが)、某大学の山中湖研修所のグラウンドのラグビーのゴールポストを描きにいった。このモチーフは、私が20代の頃、北海道(3年弱住んで北海道風景を描いた)で出遇った風景で、夏休みの誰もいないグラウンドとゴールポストが印象的で、取材だけはしたが、背景がイマイチなので絵にはしなかった。それが、何十年ぶりに、それも理想的な情景で、現成している。夏だけのグラウンドなので地面の芝生の剥げている部分が少なく緑が美しいし、面積が狭く、すぐ後が林で、その林が午前中は逆光なので、ゴールポストが際立つ。

この場所も、縦構図で描いてもいいだろうし、雪景色でも絵になるだろう。今週は、1ヶ月ぶりに野外でのイーゼル絵画を堪能した。

 2015.9.11 【富士(172)、富士(173)】

今週の山中湖行は、9日から今日(11日)まで山中湖村で過ごした。9日は大雨だったが、10日の朝は富士が見えるので久しぶりにパノラマ台に向かった。このところいつも描く場所は、高く伸びたススキの穂が視界を邪魔してイーゼルを立てる場所が無く(今度パノラマ台に来る時は、鎌を持ってこようとおもう)、やはり以前描いたことのある場所にF20号のキャンバスでイーゼルを立てた。御殿場での一木塚からの富士のように、対斜面から見た風景は、画面の下部までタップリと情景が入るので描きやすい。描き終える頃から、午后にかけて、曇って時折雨がパラつき、この日もワンチャンスを逃(のが)さなかった。

今日は、朝6時頃起きたら、すっきりと晴れわたっていたので、描かないと落ち着かず、調節池でP8号で1点手を着け、山中湖から帰柏した。この時も、やはり陽が上るにつれて、山頂は裾野に湧いた雲に隠れ、結果的に、またまたワンチャンスだった。ベストを尽くせば、ペインターズ・ハイ(私の造語)といってよい、画家ならではの恍惚感を味わえて、過した時間の充足感と満足感はたまりません。画家の皆さん、イーゼル画をやりましょう。私が保証します。

 2015.9.18 【雨で出られず】

今週の山中湖行は、16日から今日(18日)まで山中湖村で過ごした。このところの秋の長雨で、3日間とも終日アトリエで過した。外で1点でも描ければベストなのだが、アトリエに閉じ込められても自然の中の空間で数日過すと、心が落ち着く。

来週の火曜日(9月22日)から、10月3日まで銀座藤屋画廊で『視惟展』なのだが会期中でもやはり山中湖に行こうと思っている。個展ではそうはいかないが、グループ展なので誰かが画廊に出ているだろう。

写真は、山中湖のアトリエにある、途中の絵。サイトには1枚しかアップできませんが、フェイスブックには、3枚の写真をアップします。これが今ある途中の作品の全てで、随分少なくなりました。

 2015.9.25 【富士(174),晩夏のゴールポスト(縦)】

今週の山中湖行は、視惟展の会期中だが23日から今日(25日)まで山中湖村で過ごした。最近は秋の連休をシルバーウィークというらしいが、連休中の好天から、過ぎるとすぐにまた雨だ。今年は雨が多い、農家は稲刈りがあるので天気にやきもきしているだろう。

私の方は、着いた日の午後、雲が多いが富士の山頂が顔を覗かせていたので、調節池に向かった。初めての位置で、いつもの場所から時計廻りに少し動いた所に、P15号のキャンバスでイーゼルを立てた。画面左下に、もう何点も描いた沢沿いの小道が見える。この日描いた場所から小道までの間も、描いてみたい場所を、描き終えて帰る途中で見付けた。

メインの翌日は朝から曇り空……それは言い訳で、7時頃起きたので、平野浜に行く道志小行きのバスを逃したのと、富士の姿もアヤシいので、先々週のラグビーのゴールポストをF8号の縦構図で描きに行った。午後からはやはり雨、今日も引き続いて雨の中を、途中で銀座の『視惟展』に寄って、帰柏した。

明日から、来週の火曜日まで視惟展の会場に通います。

 2015.10.02 【富士(175),湖畔の風景】

今週の山中湖行は、引き続いて視惟展の会期中だが9月30日から今日(10月2日)まで山中湖村で過ごした。来年の3月で私の年齢は70歳だが、人生の晩年に、イーゼル絵画に出会い、それも、富士を描くようになった成行きに、つくづく画家としての幸せをかみしめる。

小さな自分を超え、人間の歴史をも超える、「存在」そのものといってよい富士山を、眼前の対象として向いあい、主客合一の時を過ごすと、人生の場面場面の局地戦に惑わされない、真っ直ぐな道が見えてくる。

おまけに、私の人生の地図には、やはり晩年に出会ったお釈迦様や道元が、私の進むべき方向を正しく図示してくれている。間違いないのだ。このまま、真っ直ぐ進むのだ。

 2015.10.09 【富士(176)、富士(177)、富士(178)】

今週の山中湖行は、10月7日から今日(10月9日)まで山中湖村で過ごした。着いた7日の午後は快晴だったので調節池に行き、先週の「富士(175)」より時計回りに少し廻った所で、F10号で1点手を付けた。富士の初冠雪は、御殿場では絵に描いたので覚えているが9月20日だったのに、今年は遅く、未だ冠雪はしていない。

翌日、8日も朝からⅠ日快晴で、一の橋バス停、7時26分発「道志小学校」行きのバスで平野に行った。持って行くキャンバスに迷ったが、風が強いので、M6号のキャンバス2点を持って行く。いつもの場所で1点描き終え、山中湖交流プラザ「きらら」の裏に場所を移してもう1枚のキャンバスを埋めた。2枚目を描いた場処は、今回初めて見付けたポイントで湖面と近景が画面に入り、今後、何点か描くことになるだろう。

山中湖は朝晩、石油ストーブを焚きたいくらい寒くなってきた。藤屋画廊での「視惟展」も終り、こうやって、時は過ぎて行くんだなぁ。

 2015.10.15 【富士(179)、富士(180)、富士(181)】

今週の山中湖行は、10月13日から今日(10月15日)まで山中湖村で過ごした。午前11時頃山中湖に着いた13日は、快晴だったので、一服してすぐに調節池に行き、先週の「富士(176)」より更に時計回りに少し廻った所で、P12号で1点手を付けた。この日の富士山は冠雪していて、おまけに、いつ雪が降ったのか知らないがまだ日が浅いので、尾根筋が融けていなくて山頂が白く覆われて美しい。「富士(179)」を描き終え、まだ条件がいいし、太陽が次第に富士山の真上に廻ってきつつあるので、合せて持って行った、F12号のキャンバスを縦に使って「富士(180)」を描く。

この場所では、座って描いたのだが、立って描くと、下の道路から見付かるかもしれないので、描きにくいが仕方がない(フェンスが張ってあって、立ち入り禁止の場所なので)。

翌日、14日は天気予報では朝からⅠ日快晴で、一の橋バス停、7時26分発「道志小学校」行きのバスで平野に行った。先週初めて描いた山中湖交流プラザ「きらら」の裏のポイントでP15号のキャンバスを埋めた。天気予報では全国的に晴れだが、山中湖は雲が多く、山頂は雲に隠れているが、時々の、少しづつの手掛りでなんとか描ききる。

山中湖ではパソコンがないので、食事をして風呂に入ればすぐに寝てしまい、柏でも寝るのは早いが、それ以上に床に就くのが早い。そのせいで、昨夜は午前1時頃1度目が覚め、その時に、抽象画の新しいアイデアを思いついた。どう発展するか分からないが、近々やってみよう。

 

 2015.10.22 【富士(182)、富士(183)、野菊】

今週の山中湖行は、10月20日から今日(10月22日)まで山中湖村で過ごした。着いた日の20日は、午後から調節池でF6号で「富士(182)」を、同じ場所でも午前中と午後では太陽の位置が違うので、逆光の富士の裾野は紫と緑と青の微妙なトーン一色に覆われ、当然、手前の木立も逆光になるので、紅葉の固有色も影にのみ込まれてしまう。同じ場所でも、イーゼルを立てると、新たな一期一会の出逢いで、何度描いても楽しい。

翌21日は朝から晴れていたので、バスでいつもの平野浜へ。この日は、晴れて雲はないのに、遠景に霞がかかり、やはりディテールの差がのみ込まれて、初めて見る美しさだ。P20号のキャンバスを持って行って良かった。こういう美しい空間に浸って一人で描いていると、天からの、私に描けという意志を感じる。つまり、私が画描きになってこの場所この時間にイーゼルを立てることは天の命令だという、私だけにオファーされているという選良意識に、一人鼻の穴がふくらむ。

午後は、庭の野菊を切って、ゴッホの椅子のレプリカの上に置き、S4号で描いた。白い野菊は、今年は去年より多く咲いていたので描こうと思っていたのだが、風景画で時間を取られ、描く機会がなかったのだが、やっと花期の最後に間に合った。これも、せっかく咲いてくれているのに描いていないという宿題を果たせて、気持がスッキリした。

 2015.10.29 【ラ フランス、富士(184)】

今週の山中湖行は、10月27日から今日(10月29日)まで山中湖村で過ごした。昼前に着いた日の27日は、朝から晴れて、富士が見えていたので、外に描きに行こうかと迷ったのだが、溜まっている途中の絵に加筆して過ごす。外は午後から強い風が吹き、外で描いていれば、難渋していただろう。「隣りの葡萄は酸っぱい」でこんな時は、強風を喜ぶ気持が思わずわいてくる、自分の卑小なスケベ心が情けない。修行が足りないなぁ。

翌28日は、満月の残月と富士をねらっていたのだが、夜の雨と、朝の曇り空であきらめ、柏から買ってモチーフに持っていった洋梨を、スペインで買って来た骨董品の銀のお皿にのせ、F5号のキャンバスで描いた。描き終えて朝食後、洋梨をもう1点描こうと思っていたのだが、天気が晴れて富士の山頂が顔を出したので、我慢ができず、一の橋バス停、11時18分発の「フジッコ一号」で平野浜に行った。予定していなかったし、朝すでに1点描いているので、P8号とM8号のやや小ぶりのキャンバスを合せて持って行く。現場に着くと、富士の向かって左側が大きく雲に隠れている。すぐに構図が決まり、P8号の画面を絵具で埋めた。

 2015.11.06 【富士(185)、朝光、ラ フランス】

今週の山中湖行は、11月4日から今日(11月6日)まで山中湖村で過ごした。今回は3日間とも快晴、おかげで忙しかった。まず着いた日は、3時頃からパノラマ台に、ここからの、初めて太陽が画面に入った情景を狙ってS10号のキャンバスに描く。描き初めと、描き終わった時と、当然、太陽の位置が違うので、特に富士山に隠れる前後は刻々と変化する。今回は太陽がまだ富士山から離れているが、落日の前後を描く時は、その前から一瞬の光を予想して全体を描いておかないと、画面の光の秩序が狂うだろうし、その瞬間から描いたのでは画面全体を描写する時間が間に合わないだろう。

翌朝は、借家のすぐ前の、一の橋通りの、道路を挟んだ向うの雑木林の朝陽を狙って、F10号のキャンバスを縦に使ってイーゼルを立てた。この場所は、柏に帰る時、7時過ぎのバス停までの途中で出会う情景で、東の空に、朝陽をさえぎる雲がない時だけしか見られない。どこででも見られそうだが、季節の、昇る太陽の位置の違いもあって、前もって狙っていなければ、なかなか出会えない。それに、林と立ち位置の間にスペースがないと、目の前の立ち木の幹が大きく視界をさえぎって、だから、林の中に入ると、イーゼルを立てる場所はかえって無いものだ。落葉松の黄葉もあって、貴重なチャンスなので、橋の上だがズウズウしくイーゼルを立てた。イーゼル画は、人目なんかは気にしてはいられない。

今朝は、洋梨がまだ食べるの早すぎるので、F5号で、先週と違う視点で(先週は椅子に座って描いたが、今朝は座蒲団で)描いて、昼、山中湖を出た。

 2015.11.12 【梢】

今週の山中湖行は、11月10日から今日(11月12日)まで山中湖村で過ごした。今回は3日間とも曇りや雨で外には描きに行けなかった。富士は雲で隠れていても、湖畔の風景は描く所があるので雨が降らなければ出かけるのだが、木々の黄葉も盛りを過ぎ、無彩色の曇り空だと気力が湧かず、今回はアトリエに籠り切りで過ごした。

しかし、11日は、朝、前の家の、ニレかナラの木の落葉前の茶色く色づいた梢を、アトリエの中からM6号で描いた。先週は、黄色く色づいて、それも良かったのだが、先週は3日間とも快晴で外で描くのが忙しくて、描けなかった。一週間で茶色に変っているが、これはこれで美しい。黄色の梢は、来年、心積もりだけしておこう。

今年、ねらっていて、描き残したモチーフが、いくつかあるし、一度描いた場所も、周りの状況が変わり、二度と描けなくなっている場所もある。だから、イーゼルを立てるチャンスは一期一会だし、そうやって出来あがって、その絵が美しく現成すれば、それは、自分にとっても世界にとっても奇蹟なのだ。オファーされてもその仕事をやり遂げるスキルを持っていなければ、もともと、オファーもこないだろうから、常に、毎日、ベストを尽くして準備万端ととのえていれば、天が「さあ、私を描きなさい」とオファーしてくれるだろう。ダ・ヴィンチもいっている、「チャンスの神さまは、後ろ頭が禿げている(岡野注;幸運は前方からしかこない。行き過ぎてから、追いかけたのでは禿げているので掴めない)」と。

 2015.11.20 【今週は新作に手が付かず】

今週の山中湖行は、11月18日から今日(11月20日)まで山中湖村で過ごした。今回も先週と同じく3日間とも曇りや雨で外には描きに行けなかった。アトリエでやることはいくらでもあるので描きに行かなくても忙しいが、今回は写真を1枚も撮らなかったので、ちょうど明日から、大倉山の「ギャラリー仁家」で始まる、第10回『視惟展』のDMを載せます。(写真は、銀座『藤屋画廊』でのもの)

私の作品を含めて、銀座展の出品作を差し替えた作家もいますので、銀座、柏ですでにご覧になった方も、もう一度、お出かけご高覧ください。明日は展覧会のオープニングなので、作家も集まります。3時頃からユルくパーティーもやりますので、どなたでもご参加ください。

 2015.11.27 【富士(186)】

今週の山中湖行は、11月25日から今日(11月27日)まで山中湖村で過ごした。今回は、着いた日は夜大雨、メインの26日は朝曇り、午後3時頃から晴れて陽も射したが、富士山頂が雲に隠れ、おまけに風も強かったので外に描きに行けなかった。

前夜、満月が出ていたので、今朝の晴れを期待していたのだが、朝の雨戸の隙間からの日射しで、すぐに調節池に向かう。2日前の大雨で、富士は、私にとっては初めての本格的な冠雪で、山頂のホワイトが新鮮で神々しい。P10号のキャンバスでイーゼルを立てた。家を出る時に、前日の絵具を(毎日の絵具の残りは、牛乳などの紙パックを開いてその上に移しておく)折りたたみパレットに移して描いたおかげで、空の青の色の新しい混色に気づく。雲一つない蒼穹は、今日の混色で試してみよう。

遅めの朝食後、昼前に山中湖を発った。慌ただしかったが、3週間ぶりの外光での描画で、気分がスッキリした。

 2015.12.04 【富士(187)】

今週の山中湖行は、12月2日から今日(12月4日)まで山中湖村で過ごした。今回は、着いた日は曇り、メインの3日は前夜から雨3時頃から雨も止み、夜には星月夜だったので、今朝は5時過ぎに起床して夜明け前の紅富士(前夜の雨で富士山頂は新雪だろうから)をねらって、現場に6時過ぎにイーゼルを立てた。

ネットで調べた甲府の日の出時刻は6時半頃なので、キャンバスをセットして描き終えた8時頃までの2時間弱の間は、光のシンフォニーを眼で聴いているおもいだ。そのぶん刻々と色と明暗が変化するので、計画的に筆を進めなくてはならない。端折るところは端折って、チャラ描きでキャンバスを埋めていくのはしょうがない。また、その方が結果的に良かったりすることも、過去に経験しているので気にしないで無心に眼と手が動く。ああ、気持良かった。

寒さ対策は充分にしたつもりだったが、足先のホカロンを貼り忘れたので、次回からは気をつけよう。

 2015.12.11 【富士(188)、富士(189)】

今週の山中湖行は、12月9日から今日(12月11日)まで山中湖村で過ごした。今回は、着いた日は午後も晴れて富士が見えていたのでパノラマ台へ、いつもの場所からヘアピンカーブを一段上った所にイーゼルを立てた。太陽が画面に入ればと思って行ったのだが山中湖を入れると太陽は画面の左に外れてしまう。今の時期、ここで富士と太陽と湖を描くのなら、稜線に落日間際の時間に合わせなくてはならない。ここではすでに、11月6日に『富士(185)』で太陽の入った絵を1点描いているが、もう数点描いてみたい。

翌朝は、7時26分の道志小学校行きのバスで「山中湖交流プラザ」裏でイーゼルを立てた。前に描いた場所は芦を刈り、葉を落とした木々も思わしくなかったので場所を移す。ここではP8号で、最初横構図で当たりを付けていたのだが、岸辺の芦と、ちょうど岸辺の水に写っている逆さ富士の一部が画面に入らないので、縦構図に変えて描いた。P8号と、M8号を合せて持っていったのでP8号で描いたのは仕方がなかったが、ここではFサイズのキャンバスで縦構図で再度描いてみようとおもう。

今回の写真は、充電したデジカメの電池を入れ忘れたままカメラを持って行ったので、画質の悪い携帯電話(ラクラクフォン)で撮った写真です。

 2015.12.18 【富士(190)、富士(191)】

今週の山中湖行は、12月16日から今日(12月18日)まで山中湖村で過ごした。着いた日の午後、先週描いた場所の落日前の太陽が画面に入った絵を描こうとパノラマ台のおなじ場所でF12号でイーゼルを立てる。現場では日没後、調子が変わってキャンバスを描き残したが、帰ってから記憶でキャンバスを埋める。

翌朝は、8時56分の“ふじっこ一号”のバスでやはり先週と同じ「山中湖交流プラザきらら」裏でS10号でイーゼルを立てる。

昔と違って、最近は外で絵を描いていて、たまに遠巻きに見られても、話かけられることはないのだが、この日はいきなり後ろから「いい趣味ですねぇ」と声をかけられた。ムッときて(私の絵が、趣味で描いている絵に見えるのか)、「趣味ではありません」と答えた。そうすると「職業ですか?」ときた。再びムッときたが、その理由を説明するのが面倒なので「そうです」と答えると「スバラシイですね」と言って、去っていった。いったい、私は、絵を描いている行為を、他人に何と説明すればいいのだろうか。

坐禅しているお坊さんや、祈っている修道士に向かって、話しかける神経が、先ずズウズウしい。坐禅しているお坊さんや祈っている修道士に「いい趣味ですね」というのも勘違い。坐禅しているお坊さんや祈っている修道士に「職業ですか、お仕事ご苦労さん」というのも、言った当人に悪気はなくとも失礼な話だ。

ということで、今度から、こういう時の私の想定問答は、

相手「いい趣味ですね」

私 「趣味ではありません」

相手「お仕事ですか」

私 「仕事でもありません」

相手「では、一体何をしているのですか」

私 「信仰(美への)です」

 2015.12.25 【富士(192)】

今週の山中湖行は、12月23日から今日(12月25日)まで山中湖村で過ごした。山中湖に着いた日は雨、翌朝(24日)は晴れて富士山頂は冠雪が新雪で美しい。この日は、起床して、描く予定のキャンバスを変更、新たに張ったために時間がかかり、午前11時にパノラマ台でイーゼルを立てた。この時間に富士山を描くのは珍しいが、かろうじて、描き初めの20分位山頂が雲に隠れなかった。この時間の空は青く、冠雪の白との対比が一段と美しい。

来週は、金曜日がお正月だが、29日に山中湖に行って、1日に柏に帰る予定で大晦日を過ごそう。来年も「日日(にちにち)是好日」で画を描き続けらればいいナ。

 2015.12.31 【富士(193)】

今週の山中湖行は、12月29日から今日(12月31日)まで山中湖村で過ごした。30日は、朝6時に起きて、7時26分のバスで平野浜に行く予定だったのだが、富士が頭を出していないので迷う。アトリエで完成途中の絵に手を入れている間に雲が切れてきたので、たまらず8時58分発の“ふじっこ”一号で出かけた。一の橋のバス停で時間を見ると、29日から1月3日まで休日運行なので、7時26分の道志小学校行きのバスは運休だった。なんだか偶然の結果オーライで、この日のモティーフに気分よく向かった。M20号のキャンバスだったので、今年の仕事納めには、上々のすべり出し。描き終わって、平野のバス停で1時間待ちだったので、「まるたか」で生ビールと生姜焼き定食で昼食、コーヒー、タバコを一服して、今年の制作は終った。

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