岡野岬石の資料蔵

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『仏陀』増谷文雄 著 角川選書ー18

『バックミンスター・フラーの世界』 ジェイ・ボールドウィン著 梶川泰司訳

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■「シナジー」とは、「部分または、その部分を構成するどんな下位にある部分を考察することによっても予測できない全体として達成された機能」と定義される。「シナジー」の具体例として、フラーはクロム・ニッケル鋼という合金を好んで引用した。その合金は、合金を構成する最も弱い部分の十倍、最も強い部分の六倍の引っ張り強度を示した。合金の引っ張り強度は、各構成要素の引っ張り強度の総和よりもはるかに大きい。(107頁)

■六本の同じ長さのストラット(支柱)から、二つの三角形ができる。しかし、シナジー的な配置にすれば、同じ六本のストラットは、四つの三角形からなる一つの正四面体を形成する。そこには思いがけないシナジー効果が存在する。四面体の内部に体積(領域)が得られることによって、宇宙は、四面体の内側にある宇宙と外側にある宇宙、さらに宇宙という概念を最初に分離する二文法のシステム(ビット)という、そのどちらにも入らない部分が形成される。このような方法で結合することによって得られる莫大な利益を暗示するものは、ストラットという物質や三角形という形態にはまったく存在しない。構成要素間の関係の変化だけが、この飛躍的な効率をもたらした。フラーは、四面体が宇宙における最小限の「システム」であるとみなした。(107頁)

テンセグリティー 「個体」は存在しない!宇宙に「物」は存在しない!ーRBF フラーは講演で、非常に力を込めた声でこう主張した。「どんな規模であれ、宇宙は、張力の海に浮かぶ圧縮力の島々によって構成されている」と強調した。恒星や惑星は、引力という孤立した島々である。断面積がゼロでありながら、その重さのない引力という「ケーブル」によって、常に要求される強度を正確に保持して、月は地球とつながっている。原子間における相互の距離は、惑星間における相互の距離と相対的に同じになる。宇宙のあらゆる事象は、他の何かと実際に接触した状態で存在していない。物質とはすべてエネルギーであり、角度と振動数によって秩序づけられている。(118~119頁)

■また、フラーはフェミニストたちをも苛立たせた。性差に関するフラーの次のような見解を認めない者もいた。「テンセグリティー構造における圧縮部材のように、男性は不連続的な存在であり、行ったり来たりひとつの場所に定まることがない。卵子を宿す女性は、生命の再生において張力部材のように連続的である。女性は、子供や老人と連れ添ってとどまる傾向がある。男性が獲物や糧をもたらすと、女性がその獲物を無駄にしないようそれを飼うのか、皮を剥ぐのか、乳を搾るのか、乗り物として利用するのか、食料とするのかといったことを決定した、女性の果たしてきた役割こそが、人類史における初の産業化だった」。(132~133頁)

■「真実」とは特別な場合(special cases)である。「真理」とは、一般化された原理を表現したものである。「神」とは、すべての「真理」をシナジェティックに統合した存在である。(134頁)

身長をお金で調節することはできない。人間だけがお金を必要とする。自然法則の支配する物理的な成功には、お金は介在しない。ーRBF(312頁)

■「生活費を稼ぐ必要はない」。この断言に、聴衆が唖然とするであろうことはフラーにはわかっていた。それを「働く必要はない」という意味に解釈した非現実的な者もいた。フラーは、けっしてそのような意味で言ったのではなかった。職業は十分にはないのかもしれないが、仕事は常に限りなくある。(312頁)

■その解決策にはコストがかかりすぎるという異議(必ずあろ反応)には、「これを実行〈しない〉場合には、どれくらいの損失が発生するか」と訪ねるとよい(これはフラーが好んだ質問のひとつだった)。その答えが本当のコストだ。競争が起きた場合には、「自分の目標は包括することであり、独占することではない」ことを思い出すべきである。また、「効率の悪いデザインを積極的に陳腐化することは、競争原理に基づいた攻撃ではない」ということも重要である。(314頁)

■そして最後に、忍耐が必要である。プロジェクトは連鎖的に波及していく。これまでにも述べてきたように、革新的な仕事には独自の懐胎期間がある。懐胎期間でさえ加速度的である。しかしバラのつぼみをドライバーでこじ開けるようなことをしてはならない。仕事を立派に終えたならば、あなたの発見は、それが最も包括的で効果的となる状況の中でゆっくりと、しかし必然的に機能していくだろう。「正しければ、問題なく先に進むことができる。勇気づけられるのはこのときだ」とフラーは述べた。フラーにはその勇気が確かにあった。プロジェクトの妨げとなったダイマクシオン・カーの衝突やモントリオール・ドームの修復工事中の火災、そして権力の介入によるエネルギー自律型のバイオ・シェルターへの破壊行為といったものを、フラーは、ある種の不運ではなく、むしろ成功を確固たるものとする、自身の哲学に対する試金石であると見なしていた。フラーの人生は時折、旧約聖書に登場するヨブのようであるが、フラーが歩調を弛めることは決してなかった。(314~315頁)

『バックミンスター・フラーの世界』 ジェイ・ボールドウィン著 梶川泰司訳

美術出版社 2008年11月1日

-『仏陀』増谷文雄 著 角川選書ー18

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