■「私が愛するレオニイ(註,彼の愛人,老寡婦)寝ようとする前に,ヴァンサンヌで電車を待つ間に,共同椅子(バンク)にかけながらお前が言った意見に就いて一言書こうと思う.お前は私が何事にも價しない様に言ったけれども,然し少なく共滑稽な人間(ブーフオン)として用立っている筈である.―(中略)―クリストも『総ての草木その他のものは無用として創造されず』と云っています.私達は生み殖えさねばならないのですが,お互いの年齢ではモウその事は考えなくてもいいでしょう.―(中略)―あなたとしても今少し私を冷酷に扱わないで下さい,私があなたを愛撫せんとする時に不愉快らしくして,私の申出に対しては厭々か,でなくば苦情の他は答えないで,私の心を裂く様な思いをさせない様にして下さい.―(後略)
愛情に充ちたる千の接吻を.
アンリイはお前の事で一ぱいだ. ア・ルッソオ」(足立源一郎氏訳による)
『みずえ』1952年3月号10頁 2007年6月2日