■たとい私があの山を一つ超えたとて、そこにも風が吹いているばかり。(94㌻)
■水の流れはさらさらと
風の響きはそよそよと
昇る旭はきらきらと (107㌻)
■父上のご慈愛は、子、嫁、孫に、樋をかけて送られていた清い泉であった。その泉をのみてわれら生きたりき。その泉いま涸る。
されどその泉、影として記憶のなかに湧きつづく。その記憶の保持者たるわれら死なば、われらの遺せるあらゆるものの中より湧きつぐべし。(259㌻)
■夫婦して しぐれの音を きく日かな
わが家は ひっそりとして しぐれかな (487㌻)
『高群逸枝全集⑨』(理論社)より 2006年1月20