岡野岬石の資料蔵

岡野岬石の作品とテキスト等の情報ボックスとしてブログ形式で随時発信します。

テキストデータ 芸術の杣径 著書、作品集、図録

(39)認識論

投稿日:

(39)認識論(123頁)

そういうテーマを考えていた頃に、ちょうどカント哲学や、現象学の周辺の考え方が絡まってきた。

そのころ、考えていた事は、この宇宙のどこにも世界の存在を認識する観測者、生物がいないとしたら、そのような宇宙は存在しているといえるのか。

そして、次の思考実験。もし、この宇宙にこうもり一種類しか生物がいなかったら、世界とはどういうものか。こうもりの脳の中に表象された世界が、即、世界か。

そうすると、世界にこうもりと僕の二人しかいなかったら、どうなるのか。二人しかいなくて、こうもりが目の前に座っていて、目の前のコップをこうもりと僕とが見ていて、このコップは同じ一個のコップであるのか。ある出来事は、客観的な一つの事象になりうるのか。こうもりと僕は、同一のものを見ているのか。目の前の一個のコップと、僕の認識するコップと、こうもりの認識するコップ、その三つのコップはぴったりと一致するのか。

そのようにいろいろ組み合わせて考えていくと、事実は一つというのは、薮の中だ。芥川竜之介の小説「薮の中」(1922年)。その小説を黒沢明監督が映画化した「羅生門」(1950年)の世界。

世界は認識する人それぞれの現象の場において初めて立ち現れる。外側の世界は暗黒である。…その辺りから、現象学から実存主義の方に傾いて行った。それで五〇歳を過ぎてから、実存主義を抜け出て、結局、現在の超越的実在論者になるんだけれど、一番最初に哲学に興味を持ったのは、その辺から。僕だけでなく、皆がナチュラルに当たり前だと思っているこの世界とは、そんなに単純じゃないぞ、とそのように考えていった。

-テキストデータ, 芸術の杣径, 著書、作品集、図録
-

執筆者:

関連記事

『芸術の哲学』第3章

  第1章 第2章 第3章 第4章 第5章   『芸術の哲学』第3章   ●ランダムなドットが立体に見えてくる体験…パラダイムの転換  「物感」という重要な概念に出会った …

(66)光を意識し始めたころ

(66)光を意識し始めたころ(238頁) 実際に絵を描いていると、何かを描こうという最初の発想を動機にはするけれど、いざ描きだすと、ほとんどが「美しさ」の方に行ってしまう。より美しい方向にどんどん自分 …

伊豆大島だより

  『画中日記』2022.05.17【伊豆大島にイーゼル画を】  来週、23日から28日まで伊豆大島にイーゼル画を描きに行く。イーゼル画を描いたのは、2021年1月19日の東伊豆以来だ。その …

(25)自分の仕事のアナロジー

(25)自分の仕事のアナロジー(82頁) 同じ魚に関わる職業に、色々な職業がある。漁師、仲買人、魚屋、スーパー、料理人、一般消費者、魚類学者、釣り道具メーカー、釣り道具店・・・造船所、船のエンジンのメ …

⑶而今、現成、マンデルブロー集合

⑶而今、現成、マンデルブロー集合 じつに恐ろしい。いや恐ろしいのではなく、これは素晴らしいのだよ。世界は、こうやって存在しているなんて、世界に、こうやって存在しているなんて、自分の存在がなんと幸運でな …