■再三,僕が人に話すのは,芸術は活写なりというふるいことばである。あらゆる知性的な奇工は淪(ほろ)びても、活写だけは,芸術の力としてのこりうるのだ。トルストイの倫理的な苦悩よりも,『アンナ・カレーニナ』のなかの溌剌とした競馬場の馬の活写はのこるのだし、やはり、馬だが、ベラスケスの「ブレダ城の降伏」の馬の,尻の毛並みにうけている光線の活写は、アバンギャルドをしのぐ、時間を超えて人の心を感動させるものを持っている。(123㌻)
『金子光晴詩集』金子光晴 思潮社 現代詩文庫 2007年6月3日
岡野岬石の作品とテキスト等の情報ボックスとしてブログ形式で随時発信します。
投稿日:
■再三,僕が人に話すのは,芸術は活写なりというふるいことばである。あらゆる知性的な奇工は淪(ほろ)びても、活写だけは,芸術の力としてのこりうるのだ。トルストイの倫理的な苦悩よりも,『アンナ・カレーニナ』のなかの溌剌とした競馬場の馬の活写はのこるのだし、やはり、馬だが、ベラスケスの「ブレダ城の降伏」の馬の,尻の毛並みにうけている光線の活写は、アバンギャルドをしのぐ、時間を超えて人の心を感動させるものを持っている。(123㌻)
『金子光晴詩集』金子光晴 思潮社 現代詩文庫 2007年6月3日
執筆者:okanokouseki
関連記事
『正法眼蔵』【真実の求め】酒井得元 大法輪閣 ●先師古仏云わく、渾身口に似て虚空に掛く、東西南北の風を問わず、一等に他が為に般若を談ず、滴丁東了滴丁東(てきていとうりょうてきていとう) これ仏祖嫡々の …
『宮本常一著作集4』 日本の離島 第1集 未来社 ■寛政5年3月16日に、阿賀浦のエビ漕網が鹿老渡の沖で網をこいでいると、水死体がかかった。ふねからおちて溺死したものらしく着物は着たままであった。その …
画中日記(2019年) 『画中日記』2019.01.01【新年に】 新しい年を迎えた。パソコンに向かっているアトリエの窓から快晴の空の朝陽が目に飛び込んできている(時間は8時50分)。 今年の干支は亥 …
『黒澤明』文藝別冊追悼特集 河出書房新社 ■《黒澤監督がいる 黒澤組にて 大寶智子》 「芝居なんて、そんなに急に、上手くなるもんじゃないんだ。薄い紙を重ねていくと、分厚くなるだろう。1枚1枚は薄くても …